牛たん定食でビールを飲む嫁

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gyu_028私は塾の講師をしている。中学受験をする子どもたちに社会科を教えているのだが、地方出身の私は、もちろん公立で育った。塾というものは私の育った地域にはなく、中学はもちろん、高校だって公立に進むのがあたりまえだった。私立もあるにはあったが、地方のそれは、公立にあがれないできの悪い生徒が行くところだった。でも都会は違う。経済的に余裕がある家庭や、一人っ子であれば共稼ぎなどをして、私立の中高一貫校に入れてしまおうという親が半分以上をしめている。

都会の受験生はなかなか大変だ。小学生でも毎日午後10時、11時くらいまで塾で勉強をしている。もちろん夕飯はお弁当だ。お母さんが作ってくれる愛情弁当の子どももいれば、親が共稼ぎでお弁当を作る時間がないので、毎回途中の弁当店で買ってくる子もいる。愛情弁当でないから愛情が足りないということはない。

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進学塾に入っている時点で、子どものことをそれなりに考えている親だからだ。親や塾が中学受験に向けて一斉に洗脳するので、子どもたちもなんの疑問も持たず勉強し続ける。合格を勝ち取るその日まで。合格して親子で涙する姿を傍らで見るのは、それまでの長い努力を知っているだけに、感無量だ。第一志望に合格できてもできなくても、生徒と親は私たちに感謝をしてくれる。第一志望に入れれば、それこそ神のようにもてはやされる。本当は受験生自身の努力によるものなのだが。

そんな私も家に帰れば、対して高級取りでもないさえない夫だ。またに外食に誘っても、つまらなそうに牛たん定食でビールを飲む嫁。昔はもっと可愛らしかったのに。かわらずにいつでも美味しい牛たんだけが、私の心を慰めてくれるのだろうか。